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「社会貢献」の義務化が福祉の改善につながるのか

 昨年9月政府は「社会福祉法人の在り方等に関する検討会」(以下「在り方検討会」と記載)を立ち上げ、今後の社会福祉法人の財政や運営主体の在り方について検討を開始しました。さらに規制改革会議においても介護、保育分野のイコールフッティング問題を検討課題にあげ、同様に社会福祉法人の在り方について議論が進められています。

 高齢者への支援、子育て支援制度の充実、生活困窮者への支援など社会福祉事業の拡充・発展が求められている今日、社会福祉法人の果たす役割は益々重要となっています。

 こうした中、「在り方検討会」や規制改革会議で「優遇税制に見合う貢献をしていない」、社会福祉法人の「経営規模の拡大や効率化を進める必要がある」といった声があがり、厚労省は社会福祉法人に対して、「社会貢献」の義務化を表明しました。

 確かに多くの社会福祉法人は日々地域住民や利用者と接する中で福祉要求や地域に存在する様々な問題に対処してきました。そして国や自治体につなげ、公的な責任による解決をめざしてきました。

 しかし、補助金や税制優遇措置を理由にした「社会貢献」の義務化は、社会福祉法人の性格や社会福祉法人が果たしてきた歴史的な役割を正しく評価していないばかりか、介護保険制度の利用者負担の社会福祉法人減免でも明らかなように、「社会貢献」という枠にはめ込むことで問題の公的な責任による解決の道をふさいでしまう、二重の意味で誤った方向と言わざるを得ません。

 また社会福祉事業や社会貢献事業などを一体的に実施できるように、法人同士の連携や統合をすすめていく方向についても、大規模法人が今日果たしている役割を否定するものではありませんが、地域の中で発展してきた社会福祉法人の歴史的経過と役割の検証のうえにたって、今後の社会福祉法人の在り方が検討されるべきです。

 すでに社会福祉法人は自治体の補助金の削減や施設整備補助金の削減で厳しい運営を迫られている状況にあります。

 地域に根差して営まれてきた社会福祉法人が今日深刻さを増す人材難が解消され、本来の事業はもとより地域の多様な問題にも対応できる安定した法人、事業の運営が実現できる社会福祉制度の改善・拡充こそ求められています。