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生きる権利を奪う生活保護制度の大改悪

 大手マスコミが有名タレントの家族が生活保護を受けている事実を、制度を悪用しているとの論調で報道したことをきっかけに生活保護受給者に対する批判がネット上などで広がっています。不正受給で逮捕されるべきはこの母親だろ」「厚かましい親子だな。こうゆう奴らが日本をだめにしている」等々。そして、民主党と自民・公明党は「社会保障と税の一体改革」の同意内容に生活保護制度の見直しや保護基準の引き下げを盛り込みました。

 民主党政府・厚労省は3党合意を踏まえ「(生活保護)基準部会」を5ヵ月ぶりに再開。また、別の部会で「扶養義務強化等改正案」の議論を開始しています。そもそも報道の発端になったタレントの問題は、自治体と相談し「仕送り」した上で受始しており、「不正受給」等ではありませんでした。しかし政府は社会保障審議会特別部会に「生活支援戦略」 のたたき台を提案。その中で扶養義務の強化を打ち出し、扶養できないと答えた家族に対し、福祉事務所の判断で「扶養義務が困難な理由」を説明する責務を負わせる仕組みを明記しました。

 こうした動きは生活保護制度の国際的な流れに逆行し、生活保護制度が抱えている真の問題点の解決につながりません。今年に入ってからも札幌市の40代の姉妹の餓死事件を始め、生活保護が受けられず餓死する痛ましいニュースが報道されています。国民から大きな批判がおこる背景にもなっている生活保護基準以下で生活している「保護が必要な人々」に保護が行き渡らない(およそ8割の人が利用できていない)現状こそ早急に改善することが求められています。さらに生保受給者増加の原因になっている労働者の生きる糧を奪う大手企業の大規模なリストラを厳しく規制することこそ求められています。

 政府が進めようとしている生活保護制度改悪案は「健康で文化的な最低限度の生活」を全国民に保障した憲法に基づく生活保護制度の理念を覆すものです。国民の生きる権利を奪う大改悪を許すわけにはいきません。