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日本経済をさらに深刻化させる「02人勧」

八月八日、人事院勧告(人勧)が報告された。周知のように、人勧はすでに四年前から一時金の削減が勧告され、年収ベースでの「賃下げ」勧告がおこなわれてきた。ところが、今回の人勧は一時金の削減にくわえ、月額給与のマイナス勧告までおこなわれているのである。このような勧告は、人勧制度発足以来のできごとである。
 報告は、行政職の公務員の平均年齢を四〇.九歳、月額三八二,八六六円とし、官民格差が−七,七七〇円(△二.〇三%)生じているという。たしかに不況のつづく下で、〇二春闘での民間産業の賃金水準は、それを理由にして大きく後退した。しかし今回のマイナス人勧は、それだけが理由ではない。これまでの賃金調査のしかたを変え、五〇人未満の零細企業の労働者もふくめた調査に切りかえている。そのような調査から、引き出された結果としてマイナス勧告なのである。
 わが国の賃金水準が、企業規模が小さくなるにしたがって賃金水準が低くなることは、これまで指摘されてきたところである。そして、中小零細企業に働く労働者の圧倒多数は、未組織状態におかれている。このような未組織労働者の賃金は、少なからず低い人勧ベースを参考にして賃金が決められているという。
 今回のマイナス人勧によって、中小企業の未組織労働者の賃金は必ずやマイナス志向を目指すであろう。そうなれば来年の人勧はこれを反映し、引きつづきのマイナス勧告となる。
 人勧は、措置費(保育運営費)や生活保護費、年金など公的部門への影響だけでなく、そこまでの影響力をもっているのである。
 人勧のいう平均年齢四〇.九歳の標準世帯とは、中学生と小学生を抱えた四人世帯である。今後いっそう学費や食費など生計費負担の重くなる世帯の年収が、年額約六四〇万円とは余りに貧しすぎるではないか。
日本経済の六割が国民消費で成立っているのをみたとき、その国民消費を冷え込ませるような今回の人勧は、さらに深刻な不況を呼ぶのではあるまいか。