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子どもをめぐる問題を象徴する児童養護施設

厚労省は、二〇〇〇年度の児童相談所への児童虐待の相談件数は一八,八〇〇件あり、実際には三万件をこえると発表している。二年前の数字であることを見たとき、今日ではさらにその数は増えているであろう。ちなみに二〇〇〇年度の数字は一〇年前に比べ、約一七倍と急増している。
最近、府下のA児童養護施設に当労組の分会が結成された。その施設は五〇人の子どもたちが入所しており、その中二一人(四二%)が虐待児童だという。当労組の分会のあるB児童養護施設では、九〇人の児童のうち五三人が虐待児童である。率にすれば五九%と過半数をこえる数字となり、これではおそらく児童集団としての機能も発揮できなくなってしまっていることであろう。
幼くして、最もたよるべき肉親から虐待をうけた子どもたちは、心に深い傷をうけ、悲しいことに誰にも心を開かないかたい人間不信の心をもった子どもたちである。このような子どもたちが多くなれば、子どもたち同士の触合いすらが希薄になり子ども集団が成り立たなくなってしまうのだという。
今日、児童養護施設は、虐待児童の受け皿の役割を担っている。しかし、はたして本当に受け皿になれるような条件が、どの程度備わっているというのであろう。虐待児童のためにと、職員配置の中に心理士(セラピー)が、あらたに配置される事になった。心理士の資格は、大学院で心理学を終了して始めて得られる資格である。心理士の配置は今の児童養護施設にとって、じつに必要なことであるが、その人件費積算は年間約三二〇万円である。このような低い単価で、はたして大学院卒の専門家が採用できるのであろうか。
児童養護施設は三才から一八歳未満の児童が、二四時間生活する施設である。その職員配置が三才児二:一、三〜六才児四:一、学齢以上児六:一の基準である。このような配置基準で、傷ついた子どもたちをどうやって守れというのか。職員を八時間労働制とするなら、少なくとも三倍は必要である。