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■全国福祉保育労組大阪地方本部
  第48回(06年度)定期大会開会あいさつ■
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全国福祉保育労組大阪地方本部
第48回(06年度)定期大会開会あいさつ

執行委員長  水野 洋次郎



 第48回定期大会に参加された代議員・オブザーバーのみなさん、朝夕は多少とも涼しくなり、少しは過ごしやすい毎日になってきましたが、まだまだ日中はきびしい残暑がつづいています。福祉職場の労働諸条件が劣悪化しているだけに、組合員ともども健康にはくれぐれも気をつけ合いたいと思います。 

 さて、すでに色々なところでお聞き及びのことと思いますが、わたしが執行委員長として、主催者を代表し開会あいさつに立つのは今回が最後となります。このような思いもこめて、開会あいさつでは次の三点について触れたいと思います。


 第一点は、今日の情勢の見方についてであります。議案書でも触れていますが、格差社会についての指摘は、以前から「勝ち組・負け組」の構造として問題視されてきました。ところで今日、マスコミ等での格差社会問題のとり上げ方は、「国民に痛みをともなう小泉構造改革」が想像以上に国民への痛みとなってあらわれ、格差社会の構造とともに、その結果としての国民の痛みそのものを問題視しはじめていることです。

一例をあげます。定率減税の廃止をはじめ、この間の国民への増税策の一つに高齢者の住民税控除の廃止が今年4月からはじまっております。これまで年収125万円以下の高齢者世帯は住民税を控除されていましたが、それが今年4月から市民税が月額1千円・府民税300円のそれぞれが課税されることとなりました。そして、控除されていた住民税が課税されると、それに連動して国民健康保険料や介護保険料もすべて引き上がることとなります。高齢者にとって年額約1万6千円程度の住民税引き上げは、じつは国保料や介護保険料の引き上げを加えれば実に3万〜6万円にもなっています。

 6月に全国各地の自治体で、国保料と介護保険料の支払い通知が高齢世帯を中心に一斉におこなわれました。そこで何がおこったでしょうか…? それは、全国各地の自治体で多くの高齢者が、区役所や市役所の窓口に相談・苦情等々、自然発生的に押し寄せたのでした。大阪市では、6月の1月間だけで実に12万4千人、高齢者世帯の2割が押し寄せたといいます。このような状況は、まさに高齢者の一揆といってよい状態でなないでしょうか。

 7月2日は、滋賀県の県知事選挙と中核市である東大阪市長選挙の投票日でした。結果はみなさんもご承知の通りで、有力視されていた現職候補者がやぶれ革新候補がそれぞれ当選しました。東大阪市長選挙に関してわたしが聞いた情報では、投票日2週間前の読売新聞の調査では、支持率が現職候補者8に対し、分裂した保守系候補者4、当選した長尾候補も同じく4の比率であったといいます。それが1週間前のサンケイ新聞の調査では、現職候補が23.9%(伸び率1.8)、それに対し長尾候補のそれは実に21.9%(伸び率5.5)、分裂保守系候補の支持率は16.6%(伸び率マイナス0.7)だったそうです。

勝利した長尾候補に、今日の自公連立政府の悪政への市民の憤りが込められていることは、私たちは十分に想像できると思います。同時に、国保料や介護保険料問題等での自然発生的な市民の怒りとあわせ、東大阪市長選挙で労働者連絡会は告示後に延べ2千人以上の活動者を組織し、運動する私たちの手で積極的に勝利の道を切り開いてきました。

 わたしは今日の情勢を語るとき、情勢は確実に新しい展望を求めて動きだしていると思います。私たちがこれからの運動をとりくむ上で、「国民が主人公」の政治を求める動きが確実にはじまっていることに、おおいに確信をもつことがたいへん重要になってきているのではないでしょうか。

 第二点は、私たちが確信をもって運動や日々の活動をとりくむためには、これまでの先輩たちの運動のあゆみや歴史をキッチリと学ぶことが大切だということです。

わたしは最近まで、「二度と子どもたちを戦場に送らない」という教育労働運動のスローガンは、戦後直後につくられたものとばかり理解しておりました。ところが雑誌・「世界」8月号での元大教組委員長の東谷敏夫さんのインタビュー記事を読みますと、このスローガンは1950年の朝鮮戦争を契機とした再軍備・自衛隊発足という情勢の下でつくられたといいます。そして、組合運動と組織は全教と日教組に分裂しても、このスローガンそのものは両組織に今日まで脈々と血のかよったスローガンとして引き継がれています。

 みなさん、朝鮮戦争を契機に再軍備・自衛隊が発足するこの時代、じつはもう一つ重要な、そして私たちに直接関係する国民的スローガンがつくられていました。それは「大砲か? バターか?」というスローガンです。

53年に自衛隊を発足させるために、当時の政府は54年度国家予算の生活保護費・社会保障予算を大幅に削り、その削った予算で再軍備のための自衛隊の予算を捻出します。このような政府の再軍備の逆流に対し、国民の中には「生活保護・社会保障を守れ」の大合唱が起こりました。そして、このような国民の大きな声を背景に、私たち福祉保育労の前身である日本社会事業職員組合も結成されました。また、中央社会保障推進協議会の結成や「人間裁判」といわれた朝日訴訟(憲法25条の「健康で文化的な最低限度の生活」とはどのような水準なのかを問う)という、生存権を国民の権利要求としてたたかう大闘争も生まれていきます。

 そこで、わたしが今、問題として思うのは「二度と子どもを戦場に送らない」という教育労働運動のスローガンは、いまだに生きたスローガンとして存在しているのに比べ、「大砲か? バターか?」のスローガンはいったいどこに行ってしまったのでしょう。はたして「大砲か? バターか?」のスローガンが、時代に合わず不必要になってしまうほど、わが国の社会福祉・社会保障制度は充実したのでしょうか。このように思う国民は皆無に近いほどいないと、わたしは確信します。

この点で、社会保障制度総破壊のきびしい攻撃のつづく今日だからこそ、わたしは再度、このスローガンなりスローガンの精神を国民的に復活させる必要があると思います。今の時代、復活させる絶好の機会ではないでしょうか。

 「二度と子どもたちを戦場に送らない」と「大砲か? バターか?」の二つの歴史的なスローガンが、アメリカの朝鮮戦争と深くむすびついて生まれたことをみたとき、わたしは重要なことに気付いたのでした。

今日の社会福祉・社会保障制度の大改悪攻撃は、わが国の21世紀の社会保障理念を「みんなのために、みんなでつくり、みんなで支える」とした『社会保障審議会95年勧告』が出発点になっていることは関係者の誰もが認める事実であります。そして、この95年という年は、実はもう一つ「新防衛計画大綱」という重要な政策がつくられていたのでした。この大綱は、アメリカ政府と自民党政府が協議をして策定されたもので、集団的自衛権の行使や有事法制と自衛隊の海外出動についての検討が「新防衛計画大綱」の下ではじめられているのです。また、介護保険法の成立した97年には「日米防衛協力のための指針(新ガイドライン)」が合意され、99年には「周辺事態に際しての我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法(国民総動員法)」まで成立しています。

 ここで少し振り返ってみたいのですが、私たちの中には自衛隊イージス艦のインド洋沖派遣や自衛隊陸部のイラク派兵が、あたかも2001年9月の「同時多発テロ」の結果であるかのような錯覚をもってはいないでしょうか。しかし、「同時多発テロ」は派遣や派兵のきっかけであったとしても、実際は、95年の「新防衛計画大綱」の具体化でしかありません。

戦後の歴史をシッカリと学んでみると、95年の『社会保障審議会95年勧告』を区切りにはじまる社会福祉・社会保障制度の大改悪攻撃は、アメリカ政府と自民党政治の国際的な反動へむけての動き、自衛隊というわが国の軍隊の動向をみたとき、あたかも約50年前の朝鮮戦争時の動きとたいへん類似しているのではないのでしょうか。

 アメリカ政府と歴代のわが国の自民党政府は、自らつくった平和憲法を成立直後から蹂躙し、今日ではこれまでの「解釈・改憲」の枠内の矛盾を打ち消すために、平和憲法そのものを葬ろうとしています。この点で、議案書の冒頭の表題となっている「憲法9条改悪を目的とした諸法案に反対し、憲法25条を暮らしに生かす運動にとりくもう」の課題は、今年度の最重点の課題であります。そして、その具体化の一つとして、来春の全国いっせい統一地方選挙戦と7月の参議院選挙戦を、労働組合運動としてどのように位置づけ、とりくんでいくのか十分な検討が重要となっています。

わたしのふれたい第三点は、福祉保育労大阪地方本部の拡大強化についてであります。わたしは自分の退任時には、ぜひとも3千人の大阪地方本部にしたいと思ってきました。しかし、残念ながら今日において、この課題を達成するにいたっておりません。わたしが72年4月に組合専従者になったとき、当時の組合員数は約150人ほどとたいへん小さな組織でした。それが35年を経た今日では約2千3百人の組合員をようする大阪地方本部となったわけですから、当時と比べるなら15倍以上の組織に成長したわけであります。

わたしが、なぜ組合員数にこだわるのかといえば、それは労働組合が任意の組織ではあっても社会的組織であり、その影響力と社会的力は組織する構成員数に大きく依拠するからであります。福祉保育労大阪地方本部という、民主的で、福祉職場にはたらく労働者と府民の立場にたち、社会不正義や不条理とたたかう労働組合を大きく強くすることは、社会発展の土台のおおきな一つとなります。そして、かならずや住民の求める社会福祉・社会保障制度の拡充に役立ち、国民生活の豊かさを保障するための大きな役割を発揮すると確信するからであります。

代議員のみなさん、これまでのきびしい攻撃の土台が崩れ始めようとしている今だからこそ、その土台を突き崩していくためにも福祉保育労大阪地方本部の拡大強化を組合員みんなでとりくもうではありませんか。そして、未来社会をつくっていくめために、労働運動そのものの活性化の一翼を担っていこうではありませんか。

以上、主催者を代表しての開会のごあいさつといたします。

-全国福祉保育労働組合大阪地方本部-